特別な日に寄り添う。絵本の中に紛れ込んだように感じられる「Restaurant Chez Noix（レストラン シェ ノワ）」

大阪メトロ中央線「高井田」駅から徒歩でおよそ7分にある「Restaurant Chez Noix シェノワ」。グリーンに覆われ、少し朽ちた雰囲気のある絵本の中から飛び出したようなお店は、創業当時からのデミグラスソースの味を守り続ける地元の人気店だ。1998年から店長を務める三井寿樹（みつい としき）さんに、開業までの経緯やおすすめのメニュー、高井田の魅力などについて伺った。

先代オーナーが自ら設計したレストラン

――開業までの経緯をお聞かせいただけますか。

三井さん　「Chez Noix」というお店自体は1972年創業で、建物は1989年に建てたものなんです。心斎橋にある老舗の洋食店で修行していた先代オーナーの桑原茂が独立するにあたって、知り合いに勧められた場所が高井田でした。高井田出身だったオーナーは、この場所を気に入って「レストランをここで始めよう」と思ったようです。

――創業当時から守り続けている味はありますか。

三井さん　時代の流れでメニューは変わってきていますが、オープン当時のまま残っているものもあります。特に自家製デミグラスソースは、創業当時から継ぎ足しで使っているので、うちの自慢です。そこは「変えたくない」という思いがありますね。

――三井さんが「Restaurant Chez Noix」に来られたきっかけを教えてください

三井さん　私がここに来たのは18歳くらいのときです。先代オーナーの息子、グランドシェフをしている桑原健と同級生で、高校生のときからアルバイトを始めて、28歳で店長になりました。

――アンティーク調で素敵な雰囲気のお店ですが、こだわりなど教えてください。

三井さん　「ジブリに出てくるお家みたい」なんてよく言われますね。特に東大阪には、こういった作りのお店は少ないみたいで、雰囲気を気に入ってくださっているお客様はたくさんいらっしゃいます。建物は、イギリスの古い家屋が好きだった先代オーナーが、それをモチーフに自分で設計して、知り合いの大工さんにお願いして建ててもらったもの。地下1階と1階、中2階、2階、3階、屋根裏があります。家具はイギリスのアンティークを買い付けてきました。

三井さん　「記念日やお誕生日などに利用されるときは、ほかのお客様の様子が気にならない角のお席や、1テーブルだけの屋根裏をご案内するようにしています。もともと、余裕をもってお席を配置していたので、コロナ禍でも席数を減らすことなくお客様をお迎えすることができています。」

先代オーナーの思いは「地域密着」。東大阪の人に愛されるお店に

――どんなコンセプトでお店をスタートされたのでしょうか。

三井さん　昔の洋食といえば、ちょっと高級なイメージがありました。少し低めの価格帯で、東大阪に住む皆さんに喜んでいただける洋食を提供したいという思いでこのお店を始めたようです。基本コンセプトは変わらず「美味しい料理と笑顔があれば人の心は豊かになる」です。

――お客様はどんな方が多くいらっしゃるのでしょうか。

三井さん　30代から50代の女性が多いですね。あとはカップル、そして近隣の会社や工場の方が、ちょっとした接待でご利用になることも多いようです。夜は遠方から来られる方も多く、「ちょっと噂を聞いて」とか、「もともと高井田に住んでいて、懐かしくなって」とかいろいろな声を聞きますね。外観と内観の面白さと、デミグラスソースを使ったハンバーグやビーフシチューに魅力を感じていただけているようです。お誕生日や何かしらの記念日にご利用いただくことも多く、子どもの頃に両親に連れてきてもらった思い出を教えてくれるお客様もいらっしゃいます。

――お店を続ける中で、大切にしていることは何でしょうか。

三井さん　メニューにも書いてあるのですが、シェノワとはフランス語で『くるみさんの家』という意味、当店ではなく“当家”と思っています。お客様に対してもお客様より、もう少し近い、身近な存在としてお出迎えすることを先代オーナーの奥様から教え込まれました。今もその気持ちを大切に接客しています。

――「Restaurant Chez Noix シェノワ」の人気メニューやこだわりメニューを教えてください。

三井さん　一番よく出るのはハンバーグです。あとはビーフシチューでしょうか。それはずっと変わりません。ハンバーグのミンチにはあいびきを使用。お肉屋さんに、豚肉と牛肉の割合を伝えています。ハンバーグを作る過程で、玉ねぎを炒めることが多いと思いますが、うちでは生のままひき肉に混ぜ込むのが特徴です。舌触りや味わいも違いますね。ドーナツ状に作ったハンバーグの真ん中にたまごを入れて焼き上げ、そして、継ぎ足し継ぎ足し味を守っているデミグラスソースをとろりとかけます。

また、ビーフシチューの作り方にもこだわりがあり、デミグラスソースを仕込む段階でお肉も一緒に煮込んでいます。2～3日から1週間程度煮込んだものから、まずお肉を取り出し、寝かし、提供する前にデミグラスソースと合わせて、もう一度煮込みます。作り方は創業当時から変わらず、そこは一切の手を抜きません。ビーフシチューのお肉はバラ肉を使用。脂も多い部位ですが、脂の甘みも魅力のひとつ。煮込み時間が長いので、お肉はほろほろとほどけるほど柔らかいです。実は70歳代の先代オーナーは、まだキッチンに立ってビーフシチューを仕込んでいます。

――人気のデザートは何でしょうか。

三井さん　ベイクドチーズケーキ、ガトーショコラ、クレームブリュレも以前から変わらず同じレシピで作っています。定番のケーキと、あとは季節のごとにレモンやシャインマスカット、いちごを使ったタルトを提供しています。

――お店ではオリジナルグッズやお土産も販売されているそうですね。

三井さん　ガトーショコラや人気のブリオッシュパンなどをお持ち帰りいただけるようにしたいということで販売も開始しました。50周年記念ということでトートバッグなどのオリジナルグッズも置いています。

――毎週土曜日のディナータイムは生演奏など、イベントも開催されているようですが、詳細を教えてください。

三井さん　コロナ禍で営業時間を短くしていることがあり、演奏時間をお昼にチェンジしています。4～5組のバンドが週替わりで来てくれて、オーソドックスな演奏から、ドラムとピアニカ、ギター、ウクレレなどが入った演奏まで、ジャズでもちょっと違った音楽を楽しんでいただいています。場所は3階の通路、吹き抜けの上になるので、どこで食事をしていただいても聞いていただくことが可能です。

――予約状況や定休日はどのようになっていますか。

三井さん　電話予約とネット予約を受け付けています。週末などは2～3日前にご予約でいっぱいになることが多いので、早めにご予約いただければありがたいですね。定休日は基本毎週月曜日と第3火曜日です。月曜日が祝日のときは、翌火曜日だけ、お休みさせてもらっています。イレギュラーなケースもありますので、ホームページやInstagramで確認していただければ確実です。

工場地帯から、子育て世代が住みやすい街へ様変わり

――この地域の暮らしやすさはどのような点でしょうか？日常でよく利用するスポットなどあれば教えてください。

三井さん　大阪市内までのアクセスはとてもいいので、暮らしやすいですね。大手のスーパーも多く、日常必要なものの買い物には困りません。治安もいいので、子育て世代の方には人気のエリアですね。保育所や幼稚園、学校も多いので、そういった年代のお子さんを育てるお母さんがたくさん、お食事に来られます。

――高井田エリアでの『おすすめの場所／好きな場所』、『休日の過ごし方』などを教えてください。

三井さん　東大阪の枚岡山展望台から見る夜景はとてもきれいです。私の実家は少し山手になるんですが、地元の人もあまり訪れない、お勧めスポットかなと思います。休日の買い物では大阪市内に出ることが多いですね。私自身、若いころはミナミに出ていましたが、大阪駅周辺にショッピングスポットが増えたこともあり、今はキタへ行く人のほうが多いかもしれません。中央大通りの上が阪神高速なので、車でのアクセスもいいですね。

地元の人に感謝し、より身近な存在としておもてなしを大切にする

――今後、この地域に住まわれる方に向けて、メッセージなどがあればぜひお願いします。

三井さん　ちょっと友達のおうちに遊びに来たようなイメージで、ふらっと立ち寄ってもらえたらうれしいです。懐かしさを感じていただけるような、丁寧に作り続けている昔ながらの洋食メニューを準備して、お待ちしています。