井上病院 インタビュー

透析治療をはじめ幅広い診療で地域に貢献する病院「井上病院」

大阪府の中で大阪市に次ぐ都市機能を持つ吹田市。「大阪大学医学部附属病院」など専門性の高い医療機関が充実していることでも知られている。そんな吹田市の都市交通機能の中心となっている江坂エリアは、ビジネス街としてのイメージが先行しがちであるが、住環境においては近年インフラ整備が進んでおり、江坂を中心とする周辺地域は居住にも人気の高い街となっている。
その中心となる「江坂」駅の至近距離に位置する中規模医療機関「井上病院」。透析を中心として発展してきた当院は、現在では内科や外科、血管外科、整形外科、眼科、泌尿器科をはじめ多くの診療科目をカバーする地域の中核病院である。 「地域医療」という言葉が各地で叫ばれている昨今、長年にわたり江坂の街と歩み続けてきた「井上病院」で医療の在り方や地域との関わりについて、院長である辻本院長と内科の藤原部長、下村部長、木津部長にお話を伺った。

井上病院 透析棟の外観
井上病院 透析棟の外観

地域に寄り添う幅広い診療

――まずは内科部長の先生方にお話を伺っていきたいと思います。
病院の特徴的な取り組み、力を入れている取り組みなどを教えていただきたいのですが、その前に診療科目についてもうかがっていいですか。

藤原部長: 診療科目は内科・腎臓内科・糖尿病内科・循環器内科・透析内科・消化器内科・外科・血管外科・整形外科・リウマチ科・泌尿器科・眼科・リハビリテーション科・放射線科・麻酔科です。透析の病院というイメージが強いのでそれ以外の診療をやっていないとか、日常の通院で使う病院ではないというイメージをお持ちの方もいらっしゃるようですが、風邪で来ていただいても全然かまわないのです(笑)。この規模の病院にしては、各分野でベテランの医師が多いと思います。内科系は女性医師も多いので、女性の患者さんからは、男性の医師には言いづらいことも伝えられるので助かるとおっしゃって頂くこともあります。

――およそ一通りのものは診療できるわけですね。

藤原部長:そうですね。加えてCTやMRIや内視鏡検査など、大きな病院では1カ月、2カ月先になる検査を比較的すぐに受けて頂くことができます。

藤原部長(左)、下村部長(中央)、木津部長(右)
藤原部長(左)、下村部長(中央)、木津部長(右)

――診療で特に力を入れている取り組みなどを教えていただけますか。

木津部長: 腎不全の進んだ患者さんや合併症の進んだ患者さんまで、しっかりトータルで診られる点が強みかなと思います。透析の患者さんは若い方でも筋肉量が落ちるサルコペニアなどを起こしやすく、転倒や寝たきりにつながることがありますが、その予防に年に1回筋肉量を図ったり、運動療法をしたり、栄養指導をしてできるだけ元気でいられるためのプログラムを始めています。また高齢者の方の誤嚥性肺炎が増えていますので、短期間でしっかりと治療できるチーム医療を実施しています。

予防のための医療にも取り組む

――予防のための医療という点で、具体的に取り組まれている活動などございますか。

木津部長: 私は糖尿病を担当していますが、予防というのはご本人の健康意識に関わる部分が多いと考えています。特に働き盛りの方は、健康診断の異常の所見が出ても診断を受けに来られない方が多いですね。

藤原部長: 私は腎臓病担当ですが、こちらでもそれは多いです。尿検査で「いつもタンパク尿は(+)がついているからいいや」という感じで診察に来なかったがために、10年、20年後に透析となっている患者さんもいらっしゃいますので、検診の結果を軽んじないでぜひとも検診結果をもってきて頂きたいと思っています。

木津部長: 生活習慣病としての腎臓病が国民の中でも増えていますので、健康診断で異常が出た方は早めに来ていただきたいと思います。

――本人の健康意識が何よりの予防ということですね。啓蒙的な取り組みは行っておられるのでしょうか。

藤原部長: ということで、こういう健康教室を開催しております!健康教室は無料でどなたでも参加して頂けます。腎臓病や糖尿病だけでなく消化器、骨粗鬆、感染症など、ほぼ毎月1回1時間ほどの教室になっていますので興味のある分野だけでも来ていただければ参考になると思います。

「健康教室」を定期開催
「健康教室」を定期開催

――健康教室の反響はどうでしょうか。

下村部長: 毎回アンケートを取っていますが、気になることについて先生と直接対話ができてとてもよかった、など好感触を頂くことが多いです。

――地域医療についてもう少しお話を伺いたいと思うのですが、こちらの病院にある「地域包括ケア病棟」とはどういったものでしょうか。

藤原部長: 急性期の治療を経て病状は安定したけれども、自宅や介護施設への退院に向けた医療や支援を行ったり、自宅や介護施設からの比較的軽症の急性期疾患の受入れを行う病棟です。また、当院の地域包括ケア病棟では「レスパイト入院」というものを実施しています。これは在宅介護をされているご家族の方の支援で、要介護の方に一時的に病院で入院して頂く制度のことです。

介護をしておられる方が急病になってしまったり、冠婚葬祭や休息、旅行などで介護を離れたりする際のバックアップをしようという取り組みになります。

また患者さんご本人の在宅生活、独居生活への不安、疲労の軽減による入院も受け付けています。治ったからすぐ退院ということでは、患者さん本人の不安が残るケースもありますので。こうした役割を担っているのが当院の「地域包括ケア病棟」となっています。

「地域包括ケア病棟」
「地域包括ケア病棟」

培ってきた医療から、地域のための役割を考える

――続いて、院長先生の方からこれまで井上病院で培ってきたこと、これからの病院運営、目指す医療などについてお話を伺いたいと思います。

辻本院長: 当院は1975(昭和50)年に開院し、当初は腎臓が悪い方の透析治療を必要とする患者さんのために創立した病院でした。現在では透析にも様々な方法が出てきましたので、患者さんに合った方法を選択してもらうことができます。しかし、透析は腎臓が悪くなってしまった時の治療ですので、そもそも腎臓が悪くならないようにするための予防や早期治療、悪化させないための治療など、幅広く取り組む必要があるのではないかと考えるようになりました。

幸いにして当院には腎臓病、糖尿病の専門医もたくさんいますので、腎臓病、糖尿病の治療や予防にも力を入れた医療を強化していこうというのが当院の方針です。また、開院当時に透析治療を受けていた患者さんたちが高齢になってきたことに伴い、高齢者の方への医療も得意になってきたのかなとも感じていますので、腎臓病の治療と地域医療の分野では、高齢者医療を担っていくことが当院の果たすべき役割と考えています。

辻本院長
辻本院長

――時代に合わせて役割も変化していらっしゃるのですね。吹田市には大きな病院もたくさんありますが、そういう環境の中での役割分担的なところはいかがでしょうか。

辻本院長:おっしゃる通り、吹田市は「大阪大学医学部附属病院」、「国立循環器病研究センター」、「市立吹田市民病院」と大きな病院は多いので、腎臓病以外の高度な急性期医療はそういった病院が担ってくれるのかなと思っております。逆にそういうところでは対象にならないような疾患は、腎臓病以外であっても当院で十分診ることができます。

超急性期の病院での治療後にリハビリテーションが必要な患者さんも診させていただいていますし、”地域医療構想”というワードが近年叫ばれる中、当院はこの地域において、超急性期の病院と、開業医の先生や自宅との橋渡し的な役割を担う病院として、患者さんに便利な利用の仕方をして頂いてもいいのかなと考えております。

落ち着いた雰囲気の病院内
落ち着いた雰囲気の病院内

進化した透析治療。ライフスタイルに合わせたフレキシブルな選択肢

――院長先生から病院の概要について伺いましたが、透析治療についてもう少し詳しくお話をお聞きできますでしょうか。

木津部長:血液透析は4時間から5時間という長い時間がかかる治療ですので、会社勤務やプライベートな時間も制約されるという、社会生活面での弊害も多い病気のひとつです。そして比較的高齢者に多いということでご家族の介助が必要になるケースもあります。 長く透析の診療に携わってきた経験から、当院では患者さんの社会復帰やQOL(クオリティー・オブ・ライフ)といった、”患者さん主体の医療の在り方”を考えるということが必然的に積み上がってきたという経緯があります。

――どういった経緯で”患者さん主体の医療の在り方”という考えに至るようになられたのでしょうか。

下村部長:一般的な血液透析は週3回、1日の治療時間が4~5時間必要だったわけです。通常の病院に通っての透析だと、患者さんは午後の仕事を休みにするなどの対応が必要でした。そこから夜間透析というものが始まり、当院でもこれまで長く行ってきました。しかしこの夜間透析も、会社が終わり午後6時~7時頃から透析を行い深夜23時くらいまでで終えることになるわけです。仕事への影響が無くなる分、プライベートな時間の制約ができるという弊害は避けられませんでした。そこで当院で昨年から始めたのが「オーバーナイト透析」です。

「オーバーナイト透析」
「オーバーナイト透析」

これは当院に泊まって寝ている間に時間を有効活用して透析を行うというものになります。血液透析は長い時間行うほど効果があると言われています。従来の血液透析では4~5時間が限度だった透析を、「オーバーナイト透析」では8時間くらいの長時間で行うことができるようになりました。食事制限も緩やかなものになり減薬も実現できるという多くのメリットが生み出されました。現状、働いておられる方が中心とはなっておりますが、これから多くの人々に推奨していきたいと考えている治療方法です。

――それは本当にいいことづくめですね。

藤原部長:そうなのです。今までのお話は血液透析に関するお話でしたが、当院では腹膜透析というものも実施しております。腹膜透析とは自分のお腹の腹膜を使い、バッグに入れた薬液との浸透圧を利用して老廃物を除去する方法で、患者さん自身で行える透析方法です。お腹にカテーテルを埋め込む手術が必要となりますが、通院は月1回程度となり、場所も選ばないことから自分の生活スタイルに合わせた治療を行うことが可能です。

藤原部長(左)、下村部長(中央)、木津部長(右)
藤原部長(左)、下村部長(中央)、木津部長(右)

地域の病院として歩み続ける

――地域の病院として、目指す病院像、これからの展望がありましたらご紹介ください。

藤原部長: とにかく「江坂」駅からすぐという街の中にある病院ですので、使い勝手良く来ていただきたいと思います。大きすぎず小さすぎずという部分が当院のいいところかなと思いますので。

下村部長:「レスパイト入院」も気軽にご相談いただきたいと思います。患者さんだけでなく、その家族にも寄り添った医療とケアを提供していきたいと思います。

――それでは、最後になりますが、江坂や周辺エリアの魅力について教えていただけますでしょうか。

下村部長: 住むのにも、ビジネスの街としても便利ですね。新幹線(「新大阪」駅)、飛行場(大阪国際空港)も梅田(大阪駅)の近くでありながら、騒がしい環境でもなく、緑や公園も多いです。

藤原部長: 江坂周辺って、転勤の方が多いようです。それもこの土地が便利だからなのかなと思います。話題になっているお店の話もよく聞きますね。そういうところで飽きない街でもあるのかな。

木津部長: 江坂周辺でほとんどの買い物は済ませられるので、住んでいてとても便利ですね。 吹田市として見た場合でも、緑と公園が多い地域は他になかなかないので、住むのによい環境だと思いますよ。

――どうもありがとうございました。

井上病院

院長 辻本吉広医師
腎臓内科部長 藤原木綿子医師
透析内科部長 下村菜生子医師
糖尿病内科部長 木津あかね医師
所在地:大阪府吹田市江の木町16-17
電話番号:06-6385-8651
URL:https://inoue.aijinkai.or.jp/
大阪メトロ御堂筋線「江坂」駅南出口⑧より徒歩8分
※この情報は2019(令和元)年9月時点のものです。

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