半世紀を通じて大阪の”人”を支えたまち「泉北ニュータウン」

2017(平成29)年でまちびらき50周年を迎えた泉北ニュータウン。半世紀の時の移り変わりで施設の老朽化、車中心の生活への変化や住民の少子高齢化など、ニュータウン特有の課題もある。そのような中で、泉北ニュータウン再生に向け「栂・美木多駅前活性化土地利用構想」を2016(平成28)年9月に堺市が策定した。今回は「堺市 市長公室 ニュータウン地域再生室」の主査である田辺浩士氏に「栂・美木多駅前活性化土地利用構想」についてのお話をお伺いした。

半世紀を通じて大阪の”人”を支えた街「泉北ニュータウン」

「堺市 市長公室 ニュータウン地域再生室」主査の田辺さん
「堺市 市長公室 ニュータウン地域再生室」主査の田辺さん

――「栂・美木多駅前活性化土地利用構想」の概要について教えてください

田辺さん:「泉北ニュータウン」は今から50年前に整備開発されたまちで、泉北高速鉄道の「泉ケ丘駅」、「栂・美木多駅」、「光明池駅」と3つの駅にまたがっています。それぞれの駅を中心とした3つのブロックから構成されており、「栂・美木多」はその真ん中の地区となっています。泉北ニュータウンは今年でまちびらき50周年を迎え、次代へつなげるイベントなどを行っているのですが、一方で施設の老朽化や、まちづくりの概念も当時と現在では隔たりが出ている部分も見えてきています。そこで、まず市では、2010(平成22年)に「泉北ニュータウン再生指針」を定め、2011(平成23)年から「泉ヶ丘駅前地域活性化」の取り組みに着手し、2016(平成28)年に「栂・美木多駅前活性化土地利用構想」を策定しました。本構想は概ね10年の目標期間のなかで、今後見込まれる新たな土地利用転換やまちの新たな機能導入を見据えて、地域全体で調和のとれた土地利用の方向性と行政の施策の方向性を示すとともに、民間事業者の取り組みを誘導することで「栂・美木多」駅前の活性化と魅力向上を実現させようという目的になっています。

府道38号線
府道38号線

――具体的に方針などが決まっている施設はありますでしょうか

田辺さん:栂・美木多駅を挟んで南北に「西原公園」と「原山公園」という二つの大きな公園を有しており、泉北ニュータウンのなかでも大きな資産となる部分だと考えています。泉ケ丘駅近くにある「泉ヶ丘プール」は人気のある施設ですが、これも老朽化、耐震性能不足が課題となっておりましたので、今回の構想を機に「原山公園」へと移転を行い、新しいプールとして生まれ変わることになりました。「原山公園」の再整備はひとつの象徴的なものになると考えており、PFI(民間資金を活用した社会資本整備)を活用して2020(平成32)年7月にオープンの予定となっています。

また、駅の南北の駅前広場は、バス・タクシーと一般車の動線が輻輳するなど安全面の課題がありますが、公園の整備に合わせて、ニュータウン地域再生室が中心となって再整備をしていく予定です。現在、駅直結の商業施設である「ガーデンシティ栂」(2017(平成29)年4月で営業終了)は、新たな商業施設に建て替えられます。ガーデンシティと一体になっている「ダイエー」も2017(平成29)年7月で一旦営業を終了しましたが、ガーデンシティ栂の跡地に建設される新たな商業施設で引き続き営業を行う予定になっています。なお、ダイエーの跡地にはマンションが建設される予定です。このほか、駅周辺の施設では、「府営住宅」の建て替え・更新なども行われます。

また、泉北ニュータウンの開発では、「緑道」が整備され、歩車分離によって緑道を使って駅まで車道と交差せずに歩いていける設計になっています。これも当時植えた樹木が高木に成長し、うっそうとした雰囲気のところがあったり、暗くて歩くのが怖いなどの意見もありましたので、順次改善していっているところです。

ダイエーの営業も終了したガーデンシティ
ダイエーの営業も終了したガーデンシティ

――整備を進めるにあたっての課題は?

田辺さん:事業を進めていく上での問題点でいいますと、泉北ニュータウンには駅周辺も含め、全体的に活用できる余剰地が少ないということがあげられます。現状建っているものを更新すること以外に、新たな施設等の建設を行えないという問題になりますが、例えば、府営住宅の建て替えで建物を集約・高層化することで生み出される余剰地を活用するということが計画されています。これから行っていく再生事業に伴って、新しい泉北ニュータウンの魅力を打ち出して、若い層も取り込んでいくことでまちの若返りも期待されます。この取り組みの一環として堺市では「泉北ニュータウン 若年夫婦・子育て世帯向け 家賃補助」も行っています。

人が集まる活気のある街へ、駅前の新しい顔づくり

「栂・美木多」駅
「栂・美木多」駅

――「原山公園」の再生に関してはかなり具体的な案がでているようですが詳細について教えていただけますか

田辺さん:プールはまだ泉ヶ丘で営業中(2019(平成31)年夏まで現在の場所で営業)ですが、現在の施設では屋外プールのみで、利用は夏の7月から9月初旬までとなっております。「原山公園」には現在よりも魅力的な設備を備えた屋外プールに加えて、年間通じて利用できる屋内プールも整備することになっており、トレーニングスタジオを併設することも検討されています。屋外施設ではフットサル・テニスに利用できる多目的コートやアスレチック・健康遊具を備えた広場、花や樹木の景観を眺めながらくつろげるカフェなどが整備される予定です。レクリエーション施設だけでなく自然に触れあえて、健康増進の役にも立つ、そんな広い目的を併せ持った公園となるようにイメージしています。また駅を挟んで南北に位置する「西原公園」、「原山公園」とそれぞれに接している駅前広場を連続的につながる大きな緑の回廊のようにして安全・快適な動線にすることも検討しています。もちろんバリアフリーに対応した設計を考えています。

外観パース(屋外プール等施設)
外観パース(屋外プール等施設)

――民間企業等の取組みを誘導するとのことですが、具体的にはどのような事を行っていく予定でしょうか

田辺さん:構想実現のひとつのポイントとなるのが、泉北ニュータウンの新しい魅力を発信することや、住民の方にとって今後も利便性が良く住みやすい環境をつくるということです。民間企業だけでは、営利優先的な進め方だけで目先のものに捉われて長期的なまちづくり構想と一致しない部分が出てくる可能性も起こり得ます。そこで、土地利用構想の実現に向けた道筋づくりを行政が担い、民間企業や土地所有者との連携・調整を行いながら開発事業を行っていくことで、将来的に長く住むことに不便のないような魅力的なまちづくりを進めていきます。

――計画が進行した後も、栂・美木多駅周辺の行政機能の中心としての役割は変わらずに担っていくのでしょうか。

田辺さん:泉北ニュータウンの鉄道3駅のエリアの基本的な考え方は変わりません。これは現在も駅周辺の地区センターの役割が分担され、好ましい施設立地になっているからです。つまり「泉ケ丘駅」は「タカシマヤ」をはじめとする商業施設を中心としたエリアであること、「栂・美木多駅」は南区役所や文化会館があり行政・文化施設中心というエリアであることなどです。ただ、これはあくまでも基本であり、商業施設は泉ヶ丘駅周辺以外には設置しないということではありません。例えば栂・美木多駅周辺でもこれまでにも「ガーデンシティ栂」がありましたし、新しい商業施設が建設されることにもなっています。土地利用構想では「日常生活の利便性の向上と賑わいを演出する」ということになっていますので、時代ニーズをくみ取りながら施設更新等を行わなければ、そうした新しい魅力を作ることができません。

着々と進むリニューアル・豊かな田園風景とその資産

泉北ニュータウンの風景
泉北ニュータウンの風景

――それでは最後に栂・美木多の街の魅力をお教えください。

田辺さん:泉北ニュータウンが他のニュータウンと大きく異なる特徴となっている部分ですが、泉ケ丘駅、栂・美木多駅、光明池駅という3つの駅を中心とするエリアで構成されている泉北ニュータウンには、周囲に昔ながらの農村部が残っており、趣きのある田園風景が広がっています。こういうまちの構成を利用して、田植え体験・野菜栽培体験・地元農作物のマルシェ・ソーセージ作りなど各種ワークショップ等が盛んに行なわれています。また栂・美木多には区役所・文化会館もあるため、文化的イベントに関しては3つの駅エリアのなかでいちばん盛んに行われている場所でもあります。今後、再生事業が進むなかで若い世代の転入も進んでこうしたまちの特徴を生かした新たなムーブメントが起こることも期待されますし、そういった良好なポテンシャルがある場所だと感じています。再整備のなかでまちの魅力により磨きをかけて、新しい魅力が花を咲かせるように我々も頑張っていきたいと思っておりますし、現在お住いの方、新しく住まわれる方とも協力して栂・美木多をはじめとする泉北ニュータウンを魅力的なまちにしていきたいと考えています。

堺市役所 田辺浩士さん
堺市役所 田辺浩士さん

堺市 市長公室 ニュータウン地域再生室

主査 田辺浩士さん
所在地 :堺市堺区南瓦町3-1 堺市役所本館5F
電話番号:072-228-7530
URL:http://www.city.sakai.lg.jp/shisei/gaiyo/annai/gyoseikiko/shicho/nt_saisei.html
※この情報は2017(平成29)年8月時点のものです。